神奈川芸術劇場へ「再生」を観に行きました。
なんだこりゃ、と言いたくなるような、そもそもこれは芝居なのかパフォーマンスなのか、観ているこっちがおかしくなりそうな芝居?でした。
上演時間は90分。だけど……。
岩井秀人も、快快も、「再生」という作品も、何も知らないで、ただ公式の宣伝美術の絵に惹かれてチケットを買ったのがこの作品でした。ただ、予約したのが随分前だったので、劇場に入るまでチケットの値段を完全に失念。受付に着いてようやく思い出しました。
前売りが3000円。上演時間は90分。KAATで上演するにはそれほど規模が大きくないな、と少し疑問に感じつつも、会場を待ちます。
半円形舞台になっていて、上手下手共に本棚になっている階段。遠くて何の本が並んでいるのかはわかりませんでした。中央にはしめ縄のようなものでできたすだれ。下手側には木が一本。中央にはわりと大きな岩。上手には本棚の前に棚。
この舞台が何を示唆しているのか判断つきませんが、どこかの家の庭とかかな、なんて考えながら舞台を楽しみにしていました。
開演すると、宣伝美術の絵に描かれているものと同じ風貌をした役者が次々と登場してきて……まさかのダンス。
え?ダンス公演なの?
ぼくはぽかーんとしながら舞台を眺めていました。
明らかにダンスだよね?そうだよね?これ芝居じゃないよね?いや、でもオープニングかな。オープニングだろう。
たしかにダンスから始まる演劇はあります。最近、よく見かけます。観客を惹きつけるのにうってつけですものね。
けれど、このダンス、なんとなくオープニングっぽくない。だって、役者さんがちょっとセーブかけてるんだもの。いじわるなぼくは「おいおい休んでんじゃねーぞ」なんて内心考えながら、ぼけっと観ていました。
すると2曲目、3曲目と次々エスカレートしていって……。
あれ?戻っちゃうの?
5曲ほどダンスが終わると、役者全員が地面に横たわったり、壁にのしかかったりと、パフォーマンスの終息を思わせる状態を見せます。
明らかにおかしいわけです。時計を観ていないぼくでも90分経ってないことぐらいわかる。
すると、曲がかかる。……ん?どこかで聞いたぞ?
あ、最初の曲じゃん!
と気づいてみると、役者たちが次々跳ね起きて、どこかで観たダンスを始めます。そうなんです、公式のトップページで盛大にネタバレしてしまっているので、もうここでも書いちゃいますが、最初に戻っちゃってるんです。
面食らいましたよ。何やってんの?って。
あまりにも予想外で、ついていくのに必死でした。必死でしたが、途中からこのハチャメチャな構成に笑いが止まらなくなってしまいました。
役者さんの体力が明らかに低下しているのがよくわかる。いや、これきついよ。ほんとうにハードだと思う。ダンスの仕方から観て、おそらくみんなダンス経験に乏しいひとたちなんだと思うけれど、それがなんだかすばらしい。うまいダンサーなんていらない。不器用でいい。限界に近い状態で踊り狂う役者の生の「声」が身体から強烈に発されていて、釘付けにされていきます。
まったく同じ内容で、またみんな崩れ落ちて……最初の曲。もうね、笑いますよ。おもしろいもん。
まさか3回もやられると思いませんでした。最後まで走りきった役者にあっぱれです。
エネルギーのすごさ
ぼくには刺激的で、終わったあとも興奮冷めやらぬ作品でした。横浜から東京へ帰る道の中で、iPhone片手に「再生」という作品について調べてみたところ、もともとは東京デスロックの公演だったようで、初演は自殺するために集まった男女が邦楽を流しながら踊り狂うという作品だったようです。3回繰り返す、というのも今回の公演と同じ。
「自殺」を扱った作品というのが変な感じです。ぼくにはどちらかというと「誕生」のイメージが強かった。ぼくの拙い想像力では、全容を理解するなんてできないけれど、精子と卵子だったり、性行為だったり、そんな直接的なシーンもいくつかあって、ぼくは「出産まで」を描いた作品だと思い込んでいました。「生まれる」ことが繰り返されるから「再生」だったのかな、とひとりで思いながら帰りました。
それにしても強烈な作品でした。これほどだれかとあーだこーだ言い合いたい作品もめずらしい。でもぼくはそんなに討論が得意ではないのです。残念ながら、対して知識もありません。かなしい。
まだ観ていなければ、ぜひ観てください。これはぜひ観るべき作品ですよ。
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