2015/05/17

超エネルギッシュ! 唐組「透明人間」を観劇しました!

花園神社で劇団唐組の「透明人間」を観劇しました!

「これぞ野外公演、これぞアングラ!」と言うべき、大傑作な公演でした。

変わらない紅テント

いつものように東京では新宿の花園神社と、雑司ヶ谷の鬼子母神で上演しています。

神社の境内に建てられている古ぼけた紅テント。まるでお祭り、見世物小屋のような佇まい。やっぱりこの雰囲気、大好きですね。

唐組はいつも、公演日当日の午後1時からチケットと整理番号を交換し、開場前になると、整理番号順に並んで、順番にテントへ入っていくというシステムになっています。

ぼくが整理番号を受け取った時にはすでに相当数の観客がチケットを整理番号と交換していたらしく、かなり後ろのほうでした。やっぱり1時に受け取って、新宿でぶらぶらするべきだったかしら、とちょっと後悔。

少し蒸し暑くなってきたこの頃、熱気としては充分。上演時間が近づくにつれて、次第に場も暖まっていくのを感じます。ぼくも唐組は2年ぶりなので、ワクワクが止まりませんでした。

テントの中はゴザが敷いてあるだけなので、ぼくはいつも軽装をしていきます。革靴だとかブーツなんて履いた日には不便極まりないんです。紅テントに入る時は、なるべく荷物も持ち歩かないようにしています。

爆発力のある芝居

まずはいつものように、あらすじをチラシから引用します。

ある暑い日、僕の町内に「水を恐がる犬」の噂がひろがった。

保健所員・田口はふってわいた狂犬病騒動の調査にとり掛かった。

調べを進めていくうちに、ある煙だらけの焼きとり屋の二階にたどり着く……。

そこに間借りしている老調教師・合田とその飼犬・時次郎、同じくその焼きとり屋に居候する、合田の元軍用犬学校時代の同僚の息子・辻くんが、その元凶であった。

あまつさえその時次郎は、この騒ぎをよそに辻くんと散歩中だという。

そんなところへ野球広場の少年が咬まれたという一報が飛び込んできた。

町内は大騒ぎになり、母親は少年を連れてどなり込んでくる勢いだ。

ところが当の辻くんは、犬を野放しにしたままひとり帰り、店の何故かしゃべらぬ女店員・モモを相手に語り始めるのだった。

「浮かんで、行け、どこまでも逃げて行け。そして、又会う時、この水中花の誓いを忘れるな。おまえが、もう俺を忘れていても、俺は、また、この水中花に似たものを、おまえにかざそう。そしたらきっと俺と思え」

スーパーマーケットの前にできた水たまりは、いつか戦時中の福建省にあった演習地の沼へ。幻の沼は時空を駆け巡り、水が水を呼ぶ恐水幻想が雨降る焼きとり屋の二階にあふれだす。

透明人間はここにいたのか!

※冒頭一行目はチラシだと『「ある暑い日、僕の町内に水を恐がる犬」の噂が広がった。』と記載されていますが、おそらくカギカッコの位置の間違いと思われるため、修正しています。

と、相変わらず、「よくこんな話が思いつくな」と感心仕切りな内容です。

今回の舞台も、唐戯曲によくある飲食店(焼きとり屋)の2階です。下手に四畳半ほどの和室、上手は店のテーブル席と、1階に降りる階段と、水槽(なのでしょうか、それとも雨よけなのでしょうか。見たことがないのでわかりません)があります。

この作品、過去にも何度か上演されていて、今回は初演版の戯曲を元に上演したようです。それだけに、唐十郎のキレッキレなテキストが随所に飛んできます。戯曲読みたいです。

ぼくが唐組の公演を観たのは3年ぶりです。公演名を失念してしまいましたが、唐十郎が脳挫傷により、公演に急遽出演できなくなってしまった状況でした。

やはり今回の公演も唐十郎の姿はなく、演出も「久保井研+唐十郎」の表記。「ああ、そういうことか……」と余計な勘ぐりもしてしまいます。

とはいえ、「透明人間」の戯曲のおもしろさなのか、それとも唐十郎がいないいま、逆に自由な環境が得られているのか、ここ数年の唐組の公演と比べて、非常にエネルギッシュな芝居でした。

全力でぶつけ合うセリフ、テンポのいい展開、笑いなどなど。あっという間の2時間でした。

3年ぶりでしたが、ぼくが観た唐組の公演の中で、最高の公演でした。もう一度、観たいです。きっと、ほかの観客の方にとっても同じだったんじゃないでしょうか。長く出演していた劇団員のひとたちに対して、あんなに掛け声が上がっていたのは、ぼくの知る限り初めてのことでしたから。

キャスティングがおもしろかった

妥当なキャスティングだったと思うんですが、いつもと同じようで、ちょっとだけ違うな、と思ったのが、田口役が稲荷卓央でなく、気田睦だったことです。稲荷卓央は辻役だったので「ああそういうことか」と納得しましたが。

気田睦は6年ほど前から唐組に所属していたと思うんですが、いいキャラクターなのに、ぼくが観ていた唐組の公演では大きな役がなかったので、いつかいい役に当たればいいな、と思っていました。

今回、本来だったら稲荷卓央がやっていたであろう役が、稲荷卓央には別の役のほうがふさわしかったということで、空いたところに気田睦が入り、しっかり演じきっていましたね。すばらしかった! 今後、唐十郎の過去作品を上演することが増えると思いますが、きっと、今回のようなポジションをしっかり演じ切るでしょう。

また、いつもメンバーはいつものメンバーでメインキャストとしてしっかり芝居を上演していましたが、赤松由美が今回、開場を完全に持っていっていましたね。ところで彼女、以前から少し肉付きのいい女性でしたが、近頃はその肉付きのよさが増して、すでにキャラクター化してきましたね。ヒロイン役もやっていたのに……。

個人的に一番印象に残っているのは、課長役のひと(名前、失念!)。あれほどの膨大なセリフをあのテンポ、あの聞き取りやすさで言い切りながらもスタミナ切れを起こさない。こりゃあすごい。びっくりしました。

まとめ

とにもかくにも、観ないわけにはいかない芝居です。いまも変わらないアングラ演劇だし、ほかの芝居と比べても、これほどまでにエネルギッシュな芝居はなかなかお目にかかれません。

5月、6月と東京で上演しているようなので、観ていないひと、アングラ演劇を観たことがないひと、おすすめです。芝居が好きなら絶対に観たほうがいいですよ!

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