月蝕歌劇団の「田園に死す」を観劇しました!
公演情報
団体 | 月蝕歌劇団 |
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タイトル | 田園に死す |
作 | 寺山修司 |
構成・演出 | 高取英 |
音楽 | J・A・シーザー |
劇場 | 学芸大学・千本桜ホール |
上演時間 | 120分 |
初めての月蝕歌劇団
実は初・月蝕歌劇団です。7年ほど前からずっと存在は知っていて、いつか観たいと思っていたんですが、なかなか時間が合わず観劇できなかっただけに、今回、非常に楽しみで、久しぶりに観劇に対してのワクワク感を抑えきれず、夜眠れませんでした。子供かっ!
いちおう前置きしておくと、月蝕歌劇団はアングラ演劇を上演する劇団で、上演作品については、寺山修司の作品や他にも「ザ・サブカル」なものが多く、「家畜人ヤプー」だとか「ドグラ・マグラ」だとか「少女革命ウテナ」だとか……。ただ、他のアングラ演劇と少し違うのは、キャストのほとんどが女性ということで、「暗黒の宝塚」とか呼ばれているらしい。……と、こんな知ったかぶりなこと書いているけれど、いままで観たことないので、本当はどうなのか知りません。
とにもかくにも、アングラ演劇を女性主体で演じるということに興味津々。やっぱり、アングラってどことなく男臭い雰囲気がありますから。特に、寺山修司の作品ってなおさらそんな感じがします。
初めての学芸大学駅
東急東横線にて、学芸大学駅へ。
初めての駅で、どんなところかと身構えていたら、かなり賑やかな雰囲気で、飲食店が多数並んでいて、歩いて飽きない道でした。他には鍼灸院や整骨院が妙に多かった気がします。
劇場は千本桜ホール。学芸大学駅から徒歩1分ほどで到着する距離です。駅を降りて商店街を抜けるとすぐのところにあります。
ここが千本桜ホールのある建物の前。この写真は受付中の風景で、チケットおよび当日清算を済ませ、整理番号を受け取った観客たちがいまかいまかと開場を待っています(ぼくも含めて……)。
中についてはさすがに撮影していません(撮影している観客が何人かいた……)が、関係者のツイッターに写真がいくつか掲載されていたので、そちらをどうぞ。
ちなみに、劇場の広さは50人ほどで満員になる程度のスペース。かなり小さいです。
劇場内に入ると、舞台が始まるまで、女優さんが舞台上で漫才のごとく掛け合いをしつつ、観客におみくじを引かせていました(途中、おそらく関係者の方が入った時に挨拶するため、舞台上で出たり入ったり、その間別の女優さんが入ったり……を繰り返していて、ひとりひとりがあまり記憶に残らず……。でも、本人が舞台上にいる時もいない時もやたら宣伝されていた黒木桃子さんはしっかり憶えました笑)。
「田園に死す」のお話とよかったところ
今回の作品はタイトルの通り、寺山修司の映画「田園に死す」を原作としています。
映画と同様、かくれんぼのシーンから始まり、少年の母と隣人の、時計が壊れたので直してほしい、というシーン。少年は隣人の妻(=化鳥)に興味を持っているが、新婚であるが故に隣人の目も厳しく、接点を持てなかった。その後、母とのやり取りにうんざりした少年は「恐山」に向かいイタコに父を呼び出させる。同じ頃、村では一人の女(=草衣)が赤ん坊を産み、大層かわいらしい子だと評判だった。やがて少年の前にふたりの刑事が現れる。殺人事件を捜査していて、「犬神サーカス団」を追っているとのこと。しかも、その殺人事件はかの有名な少年探偵団も調査に乗り出している。実際に少年は犬神サーカス団に訪れ、空気女と出会い、腕時計を借りることに。帰宅すると、腕時計を持っていることに母から叱られた少年は家でを決意。その時、化鳥が駆け落ちを持ちかけてくる……と、冒頭部分はこんなところです。記憶違いがあるかもしれないが、こんな感じだったと思います。
ストーリーについて、実はほとんど映画と同じで、セリフについてもだいたい同じ。だからこの後の展開についてはネタバレになるので、あまり詳細を書きませんが、映画と舞台で大きく異なるのは「殺人事件」に絡む部分。殺人や刑事、少年探偵団などは映画には一切なく、この舞台のオリジナルな部分です。
個人的に、これは大正解だったと思います。映画だと犬神サーカス団について「色欲にまみれたなんか変な連中」だということしか描かれておらず、空気女の所属場所として犬神サーカス団が存在する、というような表現で、正直、犬神サーカス団そのものに対する印象は薄いです。もちろん映像表現だから群衆のひとりにスポットを当てることができるわけで、今回で言えば、犬神サーカス団を空気女の背景として扱っても充分なのですが、舞台だとそこに「犬神サーカス団」として登場してしまう以上、空気女にスポットを当てつつも犬神サーカス団を無視するわけにはいかない。ですが、今回の舞台では殺人事件をキーワードに犬神サーカス団そのものを観客に大きく意識させた。さらに、軸のストーリー(ラストの方)にもそこを改変したが故の味付けがなされ、冒頭のかくれんぼも明確に意味を持たせ、これは非常にうまい方法だと感じました。
また、ラストシーンが映画と異なります。まあ、異なって当たり前ですよね、映画のラストシーンをこの劇場で表現するのは不可能ですし、ここでやっても映画ほどの感動はないでしょう。なので、舞台では、映画では成すことができなかったことを実行し、その結果に対してひとつの答えを提示するという形になっています。その表現が少し直接的すぎたようにも感じましたけれど、舞台作品でないものをせっかく舞台化するのだから、こういった改変は非常におもしろいですね。
演出についても目新しい部分はないんですが、不自然な演出などはなく、決して悪くなかったと思います。もとが映像なので、場面転換が少し多いくらいでしょうか。でも歌やダンスで飽きさせないような工夫はなされていたので、そこまで苦痛ではありませんでした。
ちょっとだけ残念だったところ
役者さんの(もしかしたら音響や照明も?)練習不足が見え隠れしていて、そこが少し残念だったかな……と思います。小道具として使用されていたライトの点灯ミスが多すぎるし、冒頭からダンスシーンで役者の動きが合わなかったり、セリフを合唱するシーンは何を言っているのか聞き取れないなど、最初は観劇したことを「失敗したかも」と心配になったぐらいでした笑。
聞けば先週まで「陰陽師安倍晴明」というまったく別の作品を上演していたとか。おそらく同時に稽古していたと思うんですが、まったく別物の作品を同時に稽古して、一週間前には「陰陽師」を上演していたのだから、その間「田園に死す」は稽古できないわけだし、そりゃ役者も一度切れた集中力を取り戻すのはきついでしょうね……。外野のクセに余計なお世話ですが、キャストが多いのだから、稽古期間はしっかり取ったほうがよかったのでは、と思ってしまいました。せっかくの30周年記念ですからね。とはいえ、次回公演も同じように、立て続けに2本上演するらしいので、いつもこういう上演スケジュールなのかもしれませんね。
あと、これはさすがにどうかと思ったのが、今回の座席はパイプ椅子か桟敷のどちらかなのですが、椅子のほとんどが予約席であること。本当にほとんどです。感覚として、椅子の8割近くが予約席。予約できないひとは桟敷席か、一番奥に空いている椅子のどちらかにしか座れない。ファンを大切にする、と言えば聞こえはいいんですが、自分が初めてだったこともあってアウェー感が半端なかったですし、実際、座席に関して少しトラブルがあったので、次回公演も観たいと思っている自分としては、ここはちょっと見直しをしてほしい。予約席を設けるには小屋があまりにも小さすぎるんです。
役者さんについて
キャストについては噂通り、若くてきれいな女性が多かったですね。また、おもしろいと思ったのが、今回の作品、アンサンブルがかなり多いのですが、アンサンブルのみなさんもしっかり個性があり、メインキャストと同じぐらい印象的だったことです。普通、アンサンブルって(申し訳ないですが)観客からすればほとんど印象に残らないんですが、今回だけは別でした。男性陣も同じぐらい個性的で、配役もそうですし、しっかり役割を果たせているように思いました。観ているだけで楽しめる劇団!
また、余談になりますが、化鳥(演:倉敷あみ)が途中、ロープを使ってストリップショー(?)みたいなこと(もちろん実際はそうじゃなくて何か別の表現)をするシーンがあるのですが、そこで突然、だれかがケータイかデジカメで写真を撮り始めたので、思わず笑いそうになりました。でも、ぼくも男なのでそうしたくなる気持ちは充分にわかる! ということでお咎めなしですかね笑。
そんなわけで、次回もぜひ観に行きたいです。
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